百万回生きた猫

 
そのお店の壁には絵本が飾ってありました。
 
「これ 知ってる?♪」
 
壁際の席に座り、わたしは一冊の本を指差しました。
 
「知らない どんな内容?」
 
わたしはフォークを持ったまま話し始めました。
 
目の前にはキミが取り分けてくれたサラダが手付かずのまま。
 
「でね 何回も生まれ変わった主人公は最愛の連れ合いに会うの」
 
「それで最後は?」
 
「最後は死んじゃうんだよ・・」
 
「絵本なのにハッピーエンドじゃないんだ」
 
「うん でもね 主人公は最愛の連れ合いに会って、優しさとや思いやりに包まれて幸せに暮らしたから、不幸じゃなかったんだよ」
 
「・・良い話だな・・」
 
 
窓の外が曇って見えたのは、サラダにかかっていたマスタードソースが辛かったからじゃありません。
 
素直に感情移入できるキミの心が素敵だったから。
 
 
 
 
 
 
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