椎間板ヘルニア

中学3年生にもなるとぽつぽつとカップルが誕生します。わたしはそんな彼らを横目に、相変わらずボールを追う毎日でした。
 ある日 わたしにも“告白”と言うのが来ました。隣のクラスのサッカー部の男子からでした。それまで同じクラスになった事もなく、話もしたことのない人でした。彼はわたしを入学式の日からずっと見ていたそうです。
休み時間に廊下で並んで外を眺めながらおしゃべりするのが日課になりました。そんなカップル達は学年中に公認されるんです。教科書を交換して使ったり、家が反対方向だったので、わざわざ遠回りして一緒に帰ったり。そうそう電話もよくしました。でも話しているより沈黙の時間の方が長かった気がします。

 彼は下級生に人気がありました。1~2年の女子がヒソヒソと「ほらあの人よ・・・」とわたしを指差して話すのが聞こえました。学年公認どころか下級生にまで話が広まっていてびっくりしたのを覚えています。
秋になる前に、彼はサッカー部を辞めました。理由は“椎間板ヘルニアの悪化”。それっきり校庭を走る彼の姿を見ることはありませんでした。
漠然と共学の高校に進学するものだと思い込んでいたのに、彼はさっさと工業高校へ進路を決めてしまいました。別々の高校に進んで、その生活に慣れる頃には二人の間は離れて行きました。別れたりまた会ったりを何回かくり返し、最後はとうとう別れました。
 
 20年ぶりに同窓会で会った彼は言いました 「いい女になったな」。
わたしは 「そうでしょ もったいなかったね」 と心の中で答えました。