箱根路

 

車のワイパーが利かないほどの大雨。

彼は「よしっ決めた」と急ハンドルをきりました。

他の車の影も見えず、聞こえるのはフロントガラスに叩きつける雨の音だけ。

どんどん山を登り、少し開けた場所で車を止め彼は言いました。

「キミにこの景色を見せたかった」

指差す先は霧に隠れて何も見えませんでした。

豪雨の箱根。

返事に詰まった瞬間、ぽろっと涙が落ちました。

連れて来てくれてありがとう。

 

                          

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