-恋-


わが恋を人問ひ給ふ。

わが恋を如何に答へん。

たとふれば小さき塔なり、

礎(いしずえ)に二人の命、

真柱に愛をたてつつ、

層ごとに学と芸術、

汗と血を塗りて固めぬ。


塔は是れ無極の塔、

更に積み、更に重ねて、

世の風と雨に当たらん。

猶卑し、今立つ所、

天つ日も多くは射さず、

寒きこと二月の如し。

頼めるは、微かなれども

唯だ一つ内なる光


与謝野晶子詩歌集』(弥生書房)