薄いペりペりとした紙が使われている大人用の小さな活字の辞書。
その感触を味わいたいがために、必要もないのにページをめくってみる。
開いてみると、あちこちに赤えんぴつで線が引いてある。 たくさん線が引いてある。
「お父さん勉強家だったんだねぇ」
赤線の引いてある単語だけを拾い出して読んで行く。
父はどんな文章について調べるために、この辞書を開いたんだろ。
古いアルバムで見た顔が思い出される。
父の本棚とおんなじような書籍が収まっている本棚。
見たとたんに涙がこぼれた。